本日は、よく議論されるこのテーマについて私なりの意見を書かせていただきます。ヨーガが宗教かどうかを論じるためにはまず宗教が何なのかを理解しないと話が前に進みません。世界には宗教と呼ばれる祈りの体系が無数に存在しており、最も広く知られているものとしては、①キリスト教、②イスラム教、③ユダヤ教、④仏教、⑤ヒンドゥー教あたりでしょうか。この5つの信仰を便宜上分類すると、まずは一神教か多神教に分けることができます。①~③は、いずれも特定の唯一神が存在しており、その神の言葉を預言者を通して受け取りました。その弟子たちが布教活動を行い世界に広まりました。したがって、まぎれもなくこちらは一神教です。一方で、④や⑤はどうかというと、こちらは特定の唯一神を信仰するわけではなく、様々な対象に祈りを捧げるといった趣きです。ちなみにヒンドゥー教という宗教は存在せず、インドで信仰されている様々な祈りの体系を便宜上ヒンドゥー教と呼んでいるだけです。実際には、各地の間信仰なども交わり地方によって様々な祈りの文化があります。
そして、世界には、上記に挙げた宗教以外にも様々な祈りがあります。身近なところでは、僕たちに日本人の間にも古来から神道が存在します。神道は、神羅万象に神が宿っており、どこにでも神が存在するということで、彼らを総称して「八百万の神」とも呼ばれます。また、ここで詳しくは論じませんが、古代ギリシアや古代エジプトの信仰もありますね。
さて、ここでヨーガに話を戻しましょう。ヨーガには、その根本にヴェーダと呼ばれる知識体があります。これは、現存する人類最古の知識体です。ここでは、宇宙全体が一つの大きな生命体であるという世界観が前提に話が勧められていきます。そして、この宇宙全体がひとつの大きな生命体であるという理解は前提であると同時にそれを完全に理解することが目的でもあります。われわれ人間や人間が作ったシステム、そして土や木や水や太陽、そして銀河までもすべて宇宙全体の一部であり、その宇宙の運行によってこの世界は回っています。森羅万象のあらゆるものに神性が宿っている一方で、特定の神は存在しません。
ヨーガは、このヴェーダのヴィジョンを理解するための大きな役割として「祈り」を重要と捉えています。祈る対象は宇宙全体、ヴェーダやヨーガの世界ではイーシュワラと呼ばれているものです。世界にはさまざまな宗教がありますが、その全てに当てはまる行為として「祈り」が挙げられます。「祈り」の行為やその思いを宗教と捉えるならば、ヨーガは紛れもなく宗教と呼べるでしょう。しかしながら、ある一つの神やその思想だけを信じることを宗教と呼ぶとするとヨーガは宗教ではないと言えるでしょう。
0コメント